チェンソーマン ザ・ステージ CAHINSAWMAN THE STAGE

東京 TOKYO 09.16土 10.01日 天王洲 銀河劇場 京都 KYOTO 10.06金 10.09月祝 京都劇場

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NEWS

202309.
04

開幕直前!稽古レポート公開!

いよいよ9月16日(土)に開幕を迎える「チェンソーマン」ザ・ステージ。
稽古開始直後から熱が高まっているチェンステカンパニーより稽古レポートをお届けいたします。芝居やアクションの稽古に励むキャストの様子や「チェンソーマン」ザ・ステージの世界をぜひお楽しみください。
※稽古レポートにはネタバレ要素が含まれます。

オフィシャル稽古レポート

稽古開始から約2週間、開幕まで約3週間というこの日は、一幕(全二幕)の通し稽古が行われる予定。その前に、いくつかのアクションシーンの確認が行われていた。
確認していたのは、武器の使い方や身体の動かし方。脚本・演出の松崎史也、アクション監督の栗田政明らが一つひとつを見て整えていくのだが、その修正の内容は例えば「手斧の角度を少し上向きにする」や「仰向けに転がったときに肩を地面につける」、「攻撃を仕掛けるタイミングを1秒ずらす」など、アクション満載のこの舞台では途方もないような細かな部分。しかしその後の変化を見るとハッキリとした違いがあり、感動した。また松崎は、ときに動きを減らしていたのも印象的。迫力や手数で押し切るのではない、洗練されたアクションシーンになりそうだ。

シーンの確認の後は一幕の通し稽古へ。確認で動いたからだろう、開始前に「アクションは5割くらいで」「安全を優先して」と声がかかる。物語は原作の冒頭、主人公デンジ(土屋直武)が『チェンソーの悪魔』ポチタと共にデビルハンターとして暮らし始め、殺され、悪魔の心臓を持つ『チェンソーマン』として蘇るところから描かれる。この頃のデンジは、親に背負わされた借金を返すため、内臓を売ったり、ヤクザの食い物にされたり、人並みの扱いを受けていない。しかし彼は社会も世界も知らないので、その境遇を当然のように受け入れており、なんとも言えない気持ちにさせられる。しかし、その環境でも奪われなかったデンジの無垢さが土屋の芝居の中にくっきりと輝いており、それがこの作品の光になっているように感じた。

そしてデンジはマキマ(平野 綾)と出会い、デビルハンター東京本部で働くことになる。マキマの命令で、早川アキ(梅津瑞樹)の部隊に入り、魔人のパワー(甲田まひる)とバディを組み、デビルハンターとしての活躍をみせる。その中でデンジはまず、ある夢を持つ。ちょっと引いてしまうような単純な夢だが、デンジは本気でその夢を叶えるために仕事を頑張る。そういうデンジの単純な思考回路が少しずつ変化していき、それに比例して土屋の芝居に奥行きが生まれていくのは、見ていておもしろかった。

平野によるマキマは圧巻。彼女が言葉を発すると空気がシンと研ぎ澄まされ、この空間すべてがマキマのものになるような感覚に陥る。マキマのこの存在感を劇場という生の空間で味わえるのは、なかなかない体験になるのではないかと感じた。梅津瑞樹が演じる早川アキは、寡黙で真っ直ぐという印象。アキの、人にそれを知ってほしいわけではないが内側には溢れるような感情が詰まっている感じを舞台で表現するのは難しいだろうと思うが、梅津はそこに真摯に取り組んでいた。パワーを演じる甲田まひるはシンガーソングライターでこれが初舞台。ゆえにどんなお芝居をするのか楽しみに稽古場に向かったが、想像以上にパワーだった。ゲスな言動も多いがそれを上回る魅力を放つ魔人パワーのかわいさが弾けまくっていて、ガハハ笑いがリアルでこんなにかわいいのかと嬉しくなる。デンジとパワーの閉口するようなやり取りや振る舞いも、土屋と甲田が演じるから愛らしいのだろうなと思わせるものがあった。アキのバディ姫野を演じるのは佃井皆美。佃井と言えばまずアクションが浮かぶ俳優だが、今回見学した一幕では、これまでに何人ものバディを亡くしてきた姫野が抱えるものをずっしりと身体に乗せ、繊細に演じているという印象。岩田陽葵が演じる東山コベニは、ほんの少しの匙加減で見え方が大きく変わるようなキャラクターだが、コベニのという人物のおもしろさが絶妙に表現されていて好印象。鐘ヶ江 洸が演じる荒井ヒロカズは、ある意味、一番観客に近い感覚の持ち主だ。そういう人物がこの場でどう振る舞うのか、見ていて惹きつけられる存在だった。谷口賢志が演じる岸辺も印象的。一幕では少しだけの登場だったがしっかりと存在感を残し、二幕を期待させる人物となっている。
とあるエピソードで揃うデンジ、アキ、パワー、姫野、コベニ、荒井が並ぶと、キャストもキャストで、それぞれキャリアも経験もバラバラなメンバーなのだと気づく。そこで自然と生まれるデコボコ感がキャラクターたちと重なり、愛すべき6人となっていた。

そんな彼らがデビルハンターとして悪魔と戦うアクションシーンは、この舞台の楽しみなポイントのひとつ。悪魔はどう表現されるのか、デビルハンターそれぞれの能力を使った戦いをどう見せるのかなど、期待をしている人は多いだろう。見学した一幕でもアクションシーンが見られたが、特殊な存在である悪魔たちの表現も、彼らの特殊な戦い方の表現も、舞台化の醍醐味!と嬉しくなるような多様な手法が取られていた。実際はここから更にパワーアップするだろうが、現時点でも、さまざまな道具を組み合わせ、アンサンブルの方々の息を合わせた身体表現を駆使したバトルシーンは迫力があって、なによりとてもおもしろい。
その中で、デンジが変身するチェンソーマンは、夛⽥将秀と仲宗根 豊のふたりが演じる。夛⽥は舞台「鬼滅の刃」などでも活躍するアクション俳優。仲宗根は「東京2020パラリンピック競技大会閉会式」にも出演したダンサーだ。その夛⽥のアクション、仲宗根のボーンブレイク(脱臼ダンスとも呼ばれる技)をはじめとする身体表現が、リレーのように繋がれ、チェンソーマンの動きを表現していく。そしてそこにシンクロする土屋のデンジ。人間離れしたキャラクターの動きを3人の人間によって表現していくというアイデアには脱帽してしまう。演じる側は入れ替わりのタイミングや段取りなどを何度も稽古していたが、見る側にとってはリアルなチェンソーマンが見られるのではないかと期待が高まる。

通し稽古は途中で何度か止めながら進んでいった。その合間で松崎は、ときに自身が演じてみせ、台詞の言いづらさを感じれば本人に確認して変更し、動きについて「キャラクター的にはこうしたいと思うけど、ちょっとこれも試してほしい」と提案していく。また、この作品は違う空間や違う時間を同時に表現したり、回想しながら進めていくことが多いが、松崎は役者たちに「時間の行ったり戻ったりをがんばらないといけない。自分(の芝居)だけでやろうとすると難しいので、演出と協力してやっていきましょう」と説明していた。そして役者たちも積極的に意見を出し合いながらシーンをつくっている。それぞれの役割を全うしながらも、全員で芝居を磨いていこうとしているのが感じられる稽古がとても印象的だった。

稽古後、松崎は「今の時点でここまでイメージができていれば、だいぶいいと思います」と話した。開幕まであと約3週間(※取材時)。どのような舞台ができあがるのか、とてもたのしみだ。

(撮影=大塚浩史、文=中川實穂)